搭乗

魔女さんのようなかわいい雪だるまは、子どもたちの作品

魔女さんのようなかわいい雪だるまは、子どもたちの作品

私がドゥーラと知って、また、
20年以上前に客室乗務員としてヨーロッパの空を飛んでいたと知って、
妊婦さんに必ずといってよいほどたずねられることがあります。

「妊娠中って飛行機に乗らないほうがいいんでしょう?」

 

日本産婦人科医会報や、産科医の個人運営するサイトなど、いくつかの情報源を参考にしながらまとめると、初期の搭乗が流産のリスクを高めることを実証するデータは今のところ出てはいません。

 

ただ、つわり中は乗り物酔いの起こる可能性があるなど、搭乗による身体的インパクトについてはきちんと知っておきましょう。

離着陸時の加速度負荷。

飛行中の気流による振動やそれによる外傷の可能性(防止のために妊婦用の延長シートベルトを常時着用しましょう)。

湿度およそ20%という過酷な機内環境では、空気清浄フィルターが装備されていてもフィルターを通過してしまうほど微小なウイルスにより、インフルエンザその他に罹るリスクなどは無視できません。

また、妊婦の航空機搭乗時の旅行者血栓症は今のところ報告されていないとはいえ、脱水(血液の濃縮)が血栓形成を助長する可能性もあります(血栓形成までには約4時間程度かかるといわれているので国内便の利用に際してはあまり気を使う必要はないかもしれません)。

そんなこともあって、妊娠後期の航空機搭乗に関しては、妊娠36週以降の場合、国内の航空3社を含め殆どの会社が医師の診断書(各営業所でもらえますし、サイトからダウンロードできる航空会社も多いです)を必要としており、妊娠38週以降の搭乗に際しては医師の同伴を求める航空会社が殆どです。

他にも、安全上の理由から、出産予定日から28日以内の妊婦さんは非常口座席を利用できなかったり、同伴できる幼児は1名のみであったりと、各社によって多少内容は異なっていても、いくつかの制限が出てきます。

 

いずれにせよ、出産予定日から29日以前の搭乗には制限がない(日数の数え方は、出産予定日を第1日目と数える)というのが一般的な乗客への対応のようです。それらのことを踏まえて私も、「飛行機利用に適している妊娠時期は、安定期である妊娠12週から28週頃までと言われてはいるけど、母子ともに健康であればいいのでは」と答えるようにしています。

 

もちろん、急激な振動がシートベルトから子宮に伝わりにくくするために、妊婦さん用の延長シートベルトとの間に毛布をはさむといいこと。シートベルトは腹部の下で股関節部を横切るように締めること。搭乗前や飛行中は少しでも血行がよくなるようにこまめに足首をくるくるまわしたり、トイレに立った時などは手すりや座席の背もたれなどにつかまって身体を安定させた状態で五本の足指に体重を移行しては戻すアップダウン運動を適宜行うとよいといったことなどをアドバイスします。

 

さらに、飲食についても、炭酸ガスの摂取を極力控えて、代わりにあたたかい白湯(機内に空のサーモフラスクとハーブのティーバッグなどを持ち込み、お湯だけもらって自分の好きなホットドリンクを頂くのもお薦めです)などでこまめな水分摂取をといった具体的な提案もします。

 

なかには、フライトの日が迫り、不安感が募っている方もいらっしゃるので、そういう方のためには、少しでも安心材料を増やしてもらうために、お気に入りの音楽や、どのティーバックをいくつ持っていくかといった細かいことまでリストアップのお手伝いをします。そのほか、エクササイズの目標を立てることも。例えば、一時間に一度の肩廻し、30分に一度の足首回しといったプチ運動をどのように実施するかといったことまで、当日の様子を想像しながらできるだけ具体的な目標を立ててフライトに備えます。空港内や機内での過ごし方を充実させるために、今の自分にできる範囲内で事前に心身の準備をすることで、納得のいく搭乗につながり、妊婦さんの気持ちを安定させる効果があるからです。

 

そんなアドバイスをしたりする私ですが、ちょっと考えさせられるハプニングも耳にしました。今年2015年元旦のニュースで、英国を代表する新聞社のひとつであるザ・ガーディアン紙の記事(Jessica Glenza記者 New York支局)による報道です。このイギリス人家族のストーリーをこのひと月、見守っていました。

<原文> http://www.theguardian.com/us-news/2015/jan/01/british-couple-hospital-bill-baby-born-new-york

 

あるイギリス人カップルが、出産を前に最後のロマンティックな時間をということで、ニューヨークへ5日間の旅に出かけたところ、渡航先のニューヨーク市内で予定より11週早く赤ちゃんが生まれてしまったのです。

 

インディペンデント紙の記事も併せますと、31パウンド(1400グラムちょっと)で生まれてきたダックス君は、出生後、レノックス・ヒル病院(NY)の新生児集中治療室でケアを受け、その間、両親は、”home-away-from-home(我が家から遠く離れても我が家にいるようなケアを)”をポリシーとして掲げる慈善団体ロナルド・マクドナルド・ハウス(Ronald McDonald House: www.rmhc.org)の施設に無償で宿泊させてもらいながらNYに滞在中とのことです。

 

問題は、母親のケイティー・アモスさんと父親のジョンストン氏は、レノックス・ヒル病院側から今年の3月10日まではダックス君を入院させるように告げられ、最終的にその費用は$200,000 (£130,000)、およそ2400万円 になる見込みであると言い渡されたことです。

 

高額費用に頭を抱える両親の仲間が、ただちに “Dax’s Tale of New York(ニューヨーク・ダックスの物語”というページをオンラインでつくり、つい最近まで寄付金を募っていました。先ほど確認したところ、目標額に達したということで、母親のケイティーさんから世界中の方々への感謝のメッセージと共に、ご恩返しということなのでしょう、現在の送金先はロナルド・マクドナルド・ハウスへと変更され、今も寄付金集めは続いています。

 

それにしても、今回は迅速にメディアを駆使して寄付金を募りとりあえず事なきを得たようですが、約2400万円とは、大変な金額です。年間多くの観光客を受け入れている米国で、一体どれくらいの妊産婦さんが同じような状況に立たされているのでしょう。

 

中でも私にとって印象的だったのは、記事に対して寄せられた一般市民のコメントです。例えば、‘ようこそアメリカへ!この国では、たとえアメリカ人であっても、そして、しっかり保険に入っているつもりでも、医療費は法外なんです!’といった書き込みは、つい半年ほど前にアメリカからイギリスに来た私には実感をともなって迫ってきます。医療を取り巻く背景がかなり違うことをひしひしと感じています。

(参照:https://www.opendemocracy.net/ournhs/paul-hobday/what-doctors-know-in-england-and-in-america?utm_source=OurNHS&utm_campaign=02687d788e-OURNHS_RSS_EMAIL_CAMPAIGN&utm_medium=email&utm_term=0_25189be8a1-02687d788e-407839821#comment-1762231341 )

 

私がヒューストンで地元のドゥーラ仲間と開いていた‘Houston Birth Alternatives’というオルタナティブなお産についての会合でも、VBAC(帝王切開後の経腟分娩)を望むある妊婦さんがいました。

「私は第一子のお産でお腹を切られて、$20000(約240万円)の請求書を突きつけられました。2年たった今もローンで払い続けています。。。」大きくなる二人目のお腹を抱えて泣き崩れていた彼女の姿が今も胸に焼き付いています。

 

最後にゆったりと夫婦で過ごしたいという気持ちはよく分かります。私自身も妊娠後期に沖縄を旅しましたから。。。でも、皆さんの行く先が日本ではない場合、渡航先で外国人として突然のお産になってしまった時のことまで考慮すると、つい、「くれぐれも慎重にね」と言わざるを得ません。

 

今日も飛行機の姿が我が天窓の上を通り過ぎていきます。妊婦さん、皆さんどうぞ安全で快適な旅を!

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