マイ箸でつまむ未来のお味

IMG_8645

「Mrビーン」を好きな子どもたちが、撮影に使われたことのある老舗デパート、ハロッズに行ってみたいと言うので、 科学博物館から歩いていくことに。途中、レンタルサイクルの乗り場を見かけ思わずカシャッ。使ってみようっと!

明けましておめでとうございます。いよいよ2015年のはじまりですね。

 

私の中でお正月といえば、外出は初詣くらいで、あとはコタツにもぐってミカンをほうばり、甘酒を飲みながらのんびりゆったりできるチャンス。年に一度しか使わない羽子板を母が出してきてくれたりして、「板で打つのってキツイよな…早くコタツに戻りたい」と思いながら友達と打つ羽根つきや、香ばしく焼きあがったお餅の香り、近所の空には凧がちらほら上がっていたりして…。今となっては、どのシーンも胸が締め付けられるほど懐かしく思い出されます。外国にいると、どうしても味わうことのできないお正月ならではの空気がそこにはありました。

 

ところで、日本には『祝い箸』を使ってお節を頂く習わしがあるそうです。今ではそんな風習も見受けられなくなってきたようですが、『祝い箸』とは、各家庭のあるじが、12月31日に家族全員の名を、それぞれのために折られた袋に記して、お箸を納め、それらの箸袋を神棚にお供えして新年を迎えた後に袋から出して使うというものです。多くは柳の木が使われていたということですが、東京育ちの私に「手ごろな木の枝を2本見つけてそれを使って頂くと食べ物が美味しくなるよ」と10年以上前に教えてくれたのは、小笠原の父島にあるコーヒー山で自給自足の生活を目指しながらエコヴィレッジを運営する千花(ちか)さんでした。

 

小笠原諸島に浮かぶ父島と母島。東京の竹芝桟橋から出航する週一便の汽船に乗り込み、大しけで途中は大変な状態(お食事中の方のためにこれ以上は…)になりながら26時間かけて行く甲斐は十分にある知る人ぞ知る日本の秘境です。

 

連日、シーカヤックで外海に乗り出して島々を腕一本で廻り、真っ黒になって宿に戻ると、灰と酢で体を洗い(合成洗剤は使用禁止!)、収獲されたばかりの畑の野菜をみんなで調理して頂き、放し飼いの鶏の命に感謝しながら炭火で調理し、毎晩、土地の昔話や環境問題、夢などを語り合いながら過ごしました。

 

まだ母親になることを想像もできなかった時代の旅ですが、今になって思うと、千花さん夫婦の伝えようとしていたことは、すべてエビデンスがあってのことでした。昨年末、14年11月17日付の記事ですが、アメリカの国立衛生研究所が、市販の日焼け止めクリームやシャンプー、保湿ケアに添加物として配合されている「ベンゾフェノン2(BP-2)」と「4HO-ベンゾフェノン」の2成分が、男性の不妊の原因となっている可能性があるという研究結果をまとめたのです。http://www.cnn.co.jp/fringe/35056667.html

 

不妊治療でも、最近は女性だけではなく、初期から男性側に問題がないかどうか精密検査を行うのが当たり前となってきました。私のところにも、『不妊症と言われたので体質改善したい』という方々がいらっしゃいますが、今、どれだけ多くのカップルが不妊で苦労されているか、もっと広く知って頂けたらと思います。そして、日々の生活の中でのささやかな認識を少し改めるだけで改善されていく部分もあるのだということをも知って頂けたらと思うのです。

 

クリームやシャンプーの問題は不妊だけではなく、一番懸念されているのは環境汚染です。昨年訪れたハワイでは、日焼け止めクリームなどの化学物質がサンゴを死滅の危機にさらしているとし、使用が禁止されているビーチもありました。そこには約20年近く前にも訪れたのですが、その時と比較して、今回シュノーケリングをした時には本来あるべき生態系が崩れつつあり、機能していないような、荒涼としたものがありました。

 

未来に生まれてきてくれるかもしれない命をできるだけリスクにさらしたくない。
美しい大自然の姿や生態系をできるだけ守っていきたい。

 

そう思うと、千花さんとご主人のお箸にこめたメッセージがあらためて、砂浜に寄せる波のようにすんなりとこころの奥深くに届きます。お二人は、自らの結婚式の列席者ひとりひとりのために、一膳ずつお箸を削り出し、和紙に包んで『祝い箸』として贈ったことがあるのです。ビルの林立する東京の代々木での挙式でしたが、『今日のお食事は、私たちの作った箸でお召し上がり下さい。そしてこれからも大切にお使い下さい』と言う彼女たちに、私は心の底から拍手喝采しました。小笠原の間伐材を利用して、日々の仕事の合間に半年近くをかけながら手作業で。。。どれだけ大変だったでしょう。『よくやったな』という言葉とため息以外、表現のしようがないほどに感激し、今も大切にその時の箸を使っています。

 

日本国内の割り箸の使用量は250億膳/年。そのおよそ97%が中国で作られているそうですが、それらには猛毒の防カビ成分や、白木の風合いを一見よく見せるためのブリーチ剤が染み込んでいます。洗浄されずにほとんどが出荷されているというのが実情のため、有害な薬品をお蕎麦やお弁当などと一緒に体内に取り込んでいるのが今の私たちの生活の現実です。ある全国紙経済部記者の記事によると、その毒性の高さは明らかで、金魚鉢に割り箸を付けると(何本まとめて入れたのかまでは書かれていませんでしたが)、泳いでいた金魚が浮かび上がってきたことがレポートされていました。

 

千花さんとご主人の良さんが削り出してくれた箸は、10年以上が経ち、変化し、素朴な風合いが増してきています。手作りの箸で頂くごはんの美味しさに感謝しながら、同時に、自分たちのちょっとした想いや意志ひとつで、目の前の生活が少しずつ生きやすく変化していくばかりか、時を経て周囲にも水紋のようにささやかな、でも実は深くて大きな影響を与えていくことを実感しています。食べ終わったら自然に還ることのできる箸。人も、箸も、きっとそのほうが楽だよなぁと思います。

 

シーカヤックの合間に浜辺でのランチタイム。海岸沿いに生える木々の小枝を拾って即席箸をつくり、葉っぱに包まれたお弁当を笑顔でほおばるご主人の良さん。生命力にあふれていて、とっても幸せそうです。手作りのログハウスで雨水を利用したdo it yourselfな生活。地産地消をベースにした食生活。日々の生活で大変なこともいっぱいあることでしょうが、それは、自分たちの生きる土地で採れるものを頂き、子孫を育み、大地とともに生きて、死んでいくことの許される生活。「周囲の自然とともに、跡形もなく朽ちて大地へ戻っていきたい」そんな、後には何も残さないような生き方にいっとき憧れはしても、実際に継続していける人は今の時代、一体どれだけいることでしょう。

 

私も、千花さん&良さん夫婦のように大都会で育ち、そこでの人の営みの在り方に疑問を感じ、できるだけ自然と調和して生きていきたいと願ってきました。でも、彼らのような生活を貫くことは今の自分には到底叶わないと思っています。彼らのような覚悟や心構えが今の私にはないからです。小さな努力はしているつもりです。でも現代人として、いいとこ取りをしている生活で、ジレンマを感じつつも、数々の矛盾と折り合いをつけながら毎日をしのいでいる状況です。こんな自分ですが、せめて気持ちの上だけでも、日々の意識だけでも、私たちの中にあらかじめ在る根っこと繋がっていたいと思うのです。つまり、私たちは大いなる大宇宙、自然の調和の中に生かされている一部なのだ。そして同時に‘全体(wholeness)’でもあるという、この宝物のような究極の真実をいつどんな時にも見失わないで人生の舵取りをしていきたいです。

広告