ドゥーラとして

- しあわせな妊娠・出産のために -

studyスリングに娘を入れて、ずいぶんいろいろな勉強会に参加したものです。日本を離れて長いため履歴書には書けない資格(5年を過ぎると失効)ですが、バースセンス研究所認定バースコーディネーター養成研修第3期生として、ビギナーコース、ベーシックコース、アドバンスコースの全課程を終了し、誕生学アドバイザー、アフターバースアドバイザー、そしてプレマタニティーアドバイザーの資格を取得しました。ほかにも、医師による中医学のコースや、頭蓋仙骨療法(クラニオセイクラル)などの講習会に積極的に参加し、さまざまな側面からの学びを深め、喜び勇んで妊婦さん向けの教室をスタートしました。

ところが、実際に出産を控えている女性の話を聞き取っていくと、「一体どうやったらいいお産への準備ができるのかまったく分からない」というケースがとても多いのです。こころとからだが乖離(かいり)した生活を送っている現代女性の多くは、いざ妊娠しても、お腹の赤ちゃんとのつながり感を実感することがむずかしいのです。ましてや、自分のからだがどんなスタイルのお産を望んでいるのか、自分のこころの底から得たいものを自分の内側を探ってみつけていくバイタリティーや時空間などありません。女性たちのおかれた現実とその厳しさに、とても大きなショックを受けました。と同時に、「そうだ、これこそ女性たちに必要だ!」と思った私は、産むまでに整えておきたいこころとからだの大切なバランスを体験的に学べるプログラムを考えました。

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その後、医療人類学という学問と出会い、エジンバラ大学の大学院へ進みました。その間のことはママチョイスという母親支援の出版社のブログに不定期に連載させて頂いています。バースティーチャーとして、またドゥーラとしての研鑽(けんさん)を経て、イギリスを出発点に、ロシアやアメリカでの経験を積み、現在の活動に繋がっています。今では、産みゆく方々がワンステップずつ分かりやすく学んでいけるように組み立てたクラスを開いています。

classなかでも私が大切にしているのは、自己表現の練習です。動きや言葉を通じて、自分からなにかを発信する練習をすることで自分に自信が持てるようになると、パートナーや、周囲に対しても、自分にとって大事なこと、必要なことをきちんと伝えることができるように変化していきます。それは、実際のお産にあっては、周囲の環境やケアギバーの方々に自分の希望を伝える‘分かち合いのスキル’へと進化していきます。産前マインドフルコースと日々の課題エクササイズによって、より納得感のあるお産へと自分で自分を導いていくことができるステップを、一人でも多くの方に実感してもらえればと願っています。そして、自分が自分のリソースであると感じられる状態こそが、分娩プロセスにおいて、最も効果的に働く力となるのです。

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baby日本とアメリカでの2回の自宅分娩でのお産体験を通して私は、助産師の方々の死生観に触れましたし、その底力に大きくエンパワーされました。でも、くり返しますが、いちばん頼もしかったのは、結局は自分自身でした。人は、ひとりで生まれてきて、ひとりで死んでいきます。女性が新しいいのちを産みだす瞬間も、まるごと、ありのままの自分にひとり立ち戻って、私といういのちの原風景を、新しいいのちの通り道として明け渡す行為なのだなあと思いました。同時に一方では、自分という意識が薄れ、大自然や、宇宙の営みという大きないのちの輪に組み込ませてもらうことを心からありがたく思う体験でもありました。死と違って、赤ちゃんという新しいいのちとともにいることが、お産の素晴らしいところです。赤ちゃんと呼吸を合わせて産み繋いでいく女性たちのいのちのダンス。。。いのちを育み、この世に送り出すことは、女性が生死をかけた究極の身体表現だと思います。

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「百万回生きた猫」(佐野洋子)という絵本をご存知ですか?自分の人生を振り返ると、あの話に出てくる野良猫のようだと思うことがあります。納得のいくお産を体験すると、もう、「俺、百万回生きたんだぜ」と、あの野良猫のように誇示する必要がなくなったのです。言葉を代えると、なにかを探し求めたり、どこかへ旅したりする必要はない、そんな気分になりました。なぜなら、私の中に宇宙があるから。私の知りたかったこと、手に入れたかったもの、行きたかった場所は、実はすべて自分の中にそろっていたのです。

beach今は40代ですが、年を重ねれば重ねるほど、生きるのが楽になってきました。妊娠や出産を他人に任せきりにせず、妊娠期にこころとからだの体力をつけて、お産当日に主体性をもって臨むことは大切だなぁとつくづく思います。その人なりに精一杯に頑張ってお産を乗り越え、生命の環の一部としての個を実感すると、起きる現実をありのままのものとして、また、最善なものとして受け止められる。そればかりか、きっと、残りの人生も、生きやすくなる。そんな気がしてなりません。

木村章鼓

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◆幼少期から大学入学まで - 私を形づくったもの-

◆大学時代 - 旅のはじまり –

◆ヨーロッパ線で世界の空へ - 世界を巡る旅へと –

◆結婚から出産 - ドゥーラとの出会い –

◆ドゥーラとして - しあわせな妊娠・出産のために –

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